(1)化学調味料、砂糖不要の自然調理術
土鍋料理に化学調味料や砂糖はいりません。
土鍋を使って調理すると、食材本来の持つ旨みや甘みが引き出され、上品な料理になるからです。
料理の旨みや甘みは、ゆっくりとした加熱で生み出されます。甘み(糖分)は食材に含まれるベータ・アミラーゼという酵素の働きで作られますが、この酵素は、55度〜60度の低い温度帯で澱粉を甘みに変えていきます。
旨み成分のアミノ酸も酵素の働きにより、60度以下の低温で増えていきます。
肉厚の土鍋は加熱しても、温度が上がるのに時間がかかります。この加熱する時間が長くゆっくりなので、食材から天然の旨みと甘みと栄養価を引き出すことができるのです。
(2)長い保温効果で味がシッカリしみ込む
味は熱い状態から冷めていく過程で、食材にしみ込んでいきます。美味しさを追及するなら、この冷める過程こそが重要です。
土鍋調理法の特長は、ゆっくり加熱して食材の甘み、旨みを最大限に引き出しゆっくり冷まして良く味をしみ込ませるところにあります。
「温まりにくくて、冷めにくい厚手の鍋は良い」。昔から伝えられてきたこれらの調理効果を、実は土鍋は兼ね備えているのです。
(3)芯からふっくら。遠赤外線の力
遠赤外線の力がある土鍋で煮炊きした食材は、芯からふっくら柔らかくなります。これは土鍋から2〜14ミクロンという遠赤外線が放射され、その加熱作用で、食材の酵素がゆっくりおだやかに活性化されるからです。
石焼芋や、甘栗を小石で焼く方法と同じ原理が働いています。遠赤外線は自然の加熱作用ですから、
圧力鍋のように無理な加熱で食材の組織を壊すこともなく、またビタミンB1・酵素類や栄養を損なうこともありません。食材の力がそのまま息づく料理が出来上がります。
(4)泡立ちの効用
肉厚土鍋でとろ火加熱をすると、鍋の中にフツフツとした、力のある小さな泡がたくさん立ってきます。
この泡立ちは煮物の水分と炭水化物、蛋白質、脂肪、ミネラルをよく混ぜ合わせる乳化作用により、食材の味が渾然と溶け合い、美味しく煮含めます。また料理は長く煮ても煮くずれしない、美しい仕上がりになります。
(5)燃える火の効用
人類は火を使うことで他の動物から分かれ、今日の文明の基礎を築き上げました。土鍋はこの火を、ガス火という形で使って調理します。
一方IH電気炊飯器・電磁調理器などは、電気の伝導熱による調理器具です。火を使って土鍋で調理すると、有益な遠赤外線の効果を用いることができます。
昔から、炭火焼きや石焼きの料理はその美味しさに定評がありますが、これらは土鍋料理と同様に、燃える火を使った遠赤外線料理です。
電気の伝導熱では得られない味の妙、栄養価の妙が、火を使った料理にはあるのです。また食材の内部を芯から温める遠赤外線料理は、胃に負担をかけない柔らかな仕上がりで、消化吸収に優れています。ガス火とIH(電磁調理器)伝導熱では、おいしさの効果にも断然差が出ます。
(6)土鍋はオールシーズン使える万能調理器具
土鍋はともすれば寄せ鍋料理専用と思われがちですが、肉厚で丈夫な今日の硬質の土鍋は炊く、煮る、炒る、ゆでる、蒸す、焼くが出来る万能調理器具です。
玄米・白米の炊飯や鍋料理にとどまらず、四季折々の料理が土鍋ひとつで美味しく楽しめます。
(7)セラミックス製は有害な金属溶解の心配がない
漢方薬を煎じるときに金属製の鍋ではなく「土瓶」が使われるのは、その安全面を考えてのことです。
金属鍋は加熱中に金属成分が溶け出して、薬草の成分が酸化・変質したり、薬効が失われたりする恐れがあるからです。
実際、ガスコンロの青い炎は1,000℃以上の高温で、金属鍋は調理中に熱膨張を起こします。火を止めると今度は冷めて収縮し、この膨張・収縮の繰り返しが鍋の金属疲労を招きます。その弱くなった部分から金属溶解が起こるのです。
溶解した金属だけでも体には有害ですが、それが調理中にナトリウム(塩)分の多い塩、醤油、味噌、
酸度の強い酢、焦げやすい砂糖などと混ざり合うと、深刻な化学変化が生じます。先の漢方薬の話は、この点を心配してきた先人の知恵なのです。美味しさと健康のためにと思って料理をしても、このように調理器具自体に不安があれば、恐ろしい問題です。
その点、土鍋はセラミックス(陶器)製で表面の釉薬はガラス様ですから、火にかけても溶解の心配が少ないから安心です。実際、金属製の容器を使って、梅干し、味噌、醤油、らっきょうなどを作る人はいないでしょう。
長い歴史に培われてきた日本人の食文化を再考すると、金属製の鍋・容器は、自然志向の我が国の調理法とは抵触することも多く、不要と言えるかもしれません。 |